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Grafite 2b su 4 tele sovrapposte n.162 / 1975 / Graphite on canvas / 80x80cm

  • ジャンフランコ・ザッペティーニ 個展
  • 2025.03.15 Sat - 2025.04.05 Sat
    • ジャンフランコ・ザッペティーニアセット 1

STANDING PINE 東京は、3月15日(土)より、イタリア人画家 ジャンフランコ・ザッペティーニの個展を開催いたします。本展は、東京で初めてのザッペティーニの個展となります。

1939年、イタリア・ジェノヴァに生まれたザッペティーニは、現在、2003年に自身の財団を設立したキアーヴァリを拠点に制作を続けています。彼は、戦後イタリア美術を代表するムーブメントのひとつ「Pittura Analitica(Analytic Painting)」を牽引したアーティストのひとりであり、その活動はアメリカのミニマリズムやヨーロッパの様々な抽象芸術の流れと共鳴しつつも、独自の方法論を展開しました。

ザッペティーニは、Pittura Analitica の潮流の中で発展させた「Tele Sovrapposte」や「Superficie Analitica」といったシリーズで知られ、約60年に及ぶ創作活動の中で、絵画の物質性やプロセスを探求しながら、根本的な構造や概念を問い続けています。その作品は、Westfälischer Kunstverein(ミュンスター、ドイツ)、Paris Museum of Modern Art(パリ、フランス)、Museo della Permanente(ミラノ、イタリア)、Museum of Contemporary Art of Villa Croce(ジェノヴァ、イタリア)、Vasarely Museum(ペーチ、ハンガリー)などの美術館で展示され、国際的に高い評価を得ています。また、1977年には国際美術展「documenta 6(カッセル、ドイツ)」にPittura Analiticaの主要メンバーとして参加し、近年では、ルチオ・フォンタナの「空間概念」との関係性が改めて注目されています。

本展では、1970年代の貴重な初期作品「Tele Sovrapposte」シリーズや「Superficie Analitica」シリーズをはじめ、近年取り組んでいる、赤や青など多彩な色彩を取り入れた「La trama e l'ordito(The Weft and the Warp)」を展示いたします。

「Tele Sovrapposte」シリーズ は、最初のカンヴァスに鉛筆で反復的なストロークを描き、その上に新たなカンヴァスを重ねることで、可視と不可視、存在と不在の関係を探求する作品群です。 それぞれの層が部分的に隠れながらも視覚的な影響を及ぼすことで、絵画の物質性と知覚のプロセスを浮かび上がらせます。 

一方、『Superficie Analitica』シリーズでは、アクリル絵具を幾重にも塗り重ねることで、表面に繊細な変化と奥行きを生み出します。積層された絵具は視覚的な深みをもたらすと共に、制作の過程で積み重ねられた時間の堆積や記憶の痕跡として機能しています。

ザッペティーニはイタリアのカッラーラ美術アカデミーで学んだ後、1962年にドイツ人建築家コンラート・ヴァックスマンのスタジオに参加しました。彼との2年間にわたる親交は、ザッペティーニの制作活動に大きな影響を与え、構造主義的なアプローチへの関心を深めるきっかけとなったと言われています。そして、1971年にはWestfälischer Kunstverein(ミュンスター、ドイツ)で開催されたグループ展「Arte Concreta」に参加し、ルチオ・フォンタナ、ファウスト・メロッティ、ブルーノ・ムナーリ、エンツォ・マリらと作品を発表。その後、この展覧会のキュレーターであるクラウス・ホネフやドイツ人アーティストのウィンフレッド・ゴールと共に「Analytic Painting」の理論的基盤を確立し、発展させました。

「Analytic Painting」の理論は、完成された作品よりもその過程や活動に重きを置くというものであり、多くのアーティストが賛同し、1970年代のイタリアにおける重要な芸術ムーブメントとなりました。彼らはメディウムの可能性を最大限に拡張することで、空間の認識において従来の型にはまらない考え方を提唱し、「描く」ことの意味を解明する新たな言語を作り出すことを目指しました。

ザッペッティーニは、1970年代後半に多くの展覧会や国際展に参加した後、絵画表現だけでなく、自身の存在意義について考え始めます。そして、ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジアを巡る旅へと向かい、この経験が彼の作品に大きな影響を与えました。かねてより関心を寄せていた禅や道教(特に老子の思想)に加え、アフリカの砂漠で新たに出会ったスーフィズムが、ザッペッティーニの作品をより概念的かつ象徴的なものへと発展させたのです。その後、彼の探求は「制作のプロセス」から「思考のプロセス」へと移行していき、2000年代には、特定の色に焦点を当てたシリーズ「La trama e l'ordito(The Weft and the Warp)」を発表。現在もなお精力的に創作活動を続けています。

ザッペティーニの作品は常に「目には見えないもの」に影響されているように思えます。そこには、故意に作られた物質性を超えた、精神的な美しさがあります。その精神的な類似性などから、近年では、日本の「モノ派」や韓国の「単色画」との関係性も語られています。

幾重にも塗り重ねられた絵具の層は、キャンバスに描かれていた本来の色を隠します。そして、完成した絵画には、積み重ねられた絵具が生み出す充足感と同時に、消え去った色彩の痕跡が醸し出す空虚が宿る。 それは、足し算によって生まれた引き算の美学のようです。

目に見えないものが、見えるものと同等、あるいはそれ以上に美しい。

日本から遠く離れたイタリアの地で生まれたザッペティーニの「静寂の絵画」は、私たちにそう語りかけるのです。

本展を通じて、ザッペティーニの絵画に対する深い探求と、その精神性に触れる貴重な機会となれば幸いです。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。

会期 : 3月15日(土) - 4月5日(土)
開廊時間 : 12:00 - 18:00 (火-土)  ※日月祝休廊
オープニングレセプション3月15日(土) 17:00 – 19:00

Misteri 1, 01.07.04 / mixed media /  120 x 120 cm / 2004

La trama e l'ordito n.75 / Acrylic, fassadenputz and wallnet on canvas /
100 x 100 cm / 2016


La trama e l'ordito n.17 / mixed media / 130 x 110 cm / 2009










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