EXHIBITION

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  • ジャンフランコ・ザッペティーニ 個展
  • 2019.06.15 Sat - 2019.07.06 Sat
    • ジャンフランコ・ザッペティーニアセット 1

STANDING PINEは、6月15日(土)よりイタリア人画家ジャンフランコ・ザッペティーニの日本初となる個展を開催いたします。

ザッペティーニは、1939年イタリアのジェノヴァで生まれ、現在は2003年にザッペティーニ財団を設立した地、キアーヴァリにて活動しています。ザッペティーニは、イタリア戦後美術を代表するムーブメント「Pittura Analitica(Analytical Painting)」のアーティストの一人であり、その活動はアメリカのミニマリズムやヨーロッパの様々な抽象芸術ムーブメントと密接に関わっています。

ザッペティーニは、「white」や「superimposed canvasses」と呼ばれる、キャンバス全体に広がる黒い下地の上に白いアクリル絵の具を何層にも重ねて描き加える抽象絵画で知られ、その40年以上に及ぶ活動の中で絵画の規律を再定義しています。その作品は、Westfälischer Kunstverein(ミュンスター, ドイツ)、Paris Museum of Modern Art(パリ, フランス)、Museo della Permanente(ミラノ, イタリア)、Museum of Contemporary Art of Villa Croce(ジェノヴァ, イタリア)、Vasarely Museum(ペーチ, ハンガリー)などの美術館にて数多くの個展、グループ展に参加し、国際的に高い評価を得ています。1977年には、ドイツのカッセルにて行われる国際展「documenta 6」にも招待されています。

本展では、1970年代の貴重な初期作品「Superficie acrilica(Acrylic Surface)」を始め、近年取り組んでいる赤や青などの様々な色を取り入れた「La trama e l'ordito(The Weft and the Warp)」を展示いたします。

ザッペティーニはイタリアのカッラーラの美術大学にて学んだ後、1962年にドイツ人建築家コンラート・ヴァックスマンのスタジオに参加しました。コンラート・ヴァックスマンとの2年間に及ぶ親交は、ザッペティーニの作品へ大きく影響を与え、特に構造主義への関心を掻き立てたと言われています。また、1971年にはWestfälischer Kunstverein(ミュンスター, ドイツ)にて行われたグループ展「Arte Concreta」に招待され、その作品はルチオ・フォンタナ、ファウスト・メロッティ、ブルーノ・ムナーリ、エンツォ・マリらと共に展示されました。ザッペティーニは、この展覧会のキュレーターであるクラウス・ホネス、そしてドイツ人アーティストのウィンフレッド・ゴールと共に「Analytical Painting」の基礎となる部分を作り上げ、後にその理論を発展させました。「Analytical Painting」の理論は、完成された作品よりもその過程や活動に重きを置くというものであり、多くのアーティストが賛同し、1970年代のイタリアにおける重要な芸術ムーブメントとなりました。彼らはメディウムの可能性を最大限に拡張することで、空間の認識において従来の型にはまらない考え方を提唱し、「描く」ことの意味を解明する新たな言語を作り出すことを目指していました。

1970年代後半、数多くの展覧会や国際展に参加した後、ザッペティーニは絵画だけでなく彼自身の存在意義を考え始めます。そして、ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジアを巡る旅に出ます。この芸術活動かつ個人的な旅が、その後の作品に強く影響します。以前から興味を持っていた禅や道教、そして老子の思想、さらにアフリカの砂漠で新たに出会ったスーフィズムは、ザッペティーニの作品をより概念的で象徴的なものへと発展させました。ザッペティーニの関心は、制作の過程から思考の過程へと変化していき、2000年代には特定の色に焦点を当てた作品「La trama e l'ordito(The Weft and the Warp)」を発表し、現在も精力的に活動しています。

ザッペティーニの作品は常に「目には見えないもの」に影響されているように思えます。そこには、故意に作られた物質性を超えた、精神的な美しさがあります。その精神的な類似性などから、近年では、日本の「モノ派」や韓国の「単色画」との関係性も語られています。幾重にも塗り重ねられたレイヤーは、キャンバスに描かれていた本来の色を隠します。完成した絵画には、絵の具の層が生み出す充足感と同時に、消し去られた色が醸し出す空虚さが残ります。それは、足し算によって生まれた引き算の美学と言えるでしょう。目に見えないものが見えるものと同等、もしくはそれ以上に美しいという事を、遠く離れたイタリアの地で生まれた「空白の絵画」は、鑑賞者に語りかけます。



《Superficie acrilica n.324》mixed media / 60×60 cm / 1974



《La trama e l’ordito n.4》mixed media / 80×80 cm / 2009


《La trama e l’ordito n.110》mixed media / 120×120 cm / 2008