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  • グループ展 "Dynamo : エネルギー、変容、そして運動" チュアン・ペイシン、ツーエンター、ベサ・サラサン、河合政之、ペ・ラン
  • 2025.05.17 Sat - 2025.06.14 Sat

STANDING PINEとChi-Wen Galleryは、MORI YU Galleryの協力のもと、台湾、日本、スイスからの5名のアーティスト(ツーエンター、チュアン・ペイシ、ベサ・サラサン、ペ・ラン、河合政之)によるグループ展「Dynamo:エネルギー、変容、そして運動」を開催いたします。本展は、2023年のArt Collaboration Kyoto(ACK)での共同出展に続き、両ギャラリーによる継続的なコラボレーションの一環として企画されました。

展覧会タイトル「Dynamo(ダイナモ)」は、運動を電力に変換する装置に由来しています。そして、出展作品はいずれも、「エネルギー」「変容」「運動」といった概念を探求しており、時にはテクノロジーを通じて、時には身体、光や音の変化を媒介として、さまざまな角度からこれらのテーマに取り組んでいます。

また、アートを完成された静的な対象としてではなく、変化と変容のアイデアによって形作られたものとして捉える本展では、リアルタイムで進化したり、環境に呼応したりするジェネレイティブ(生成的)やキネティック(動的)な作品に加え、ある瞬間をとらえる作品や、継続的な力の作用をプロセスとして刻んだ作品を紹介しています。

さらに本展は、参加アーティストが「変容」というテーマに対して、それぞれ異なるアプローチを展開しています。光のうつろい、デジタル・システム、あるいは身体そのものを介して、目に見える変化とともに、目には見えない根源的なエネルギーをも内包する作品群が、互いに共鳴し合いながら、空間全体に変化のエネルギーを響かせる場を創出しています。

河合政之による「Crystallization, 1–9」および「Video Feedback Configuration No.12 Generator Cuboid Mirrored Display 1」では、アナログ映像のフィードバックと電子回路という二つのプロセスが交差しながら、予測不能で絶えず変容を続ける映像が生成されます。これらの作品はデジタルプログラミングに頼るのではなく、「帰還する電子の無限の流れ」を活用することで、絶え間ない運動と変化を備えた、有機的なシステムとして立ち現れます。

「繊細さ」と「流動性」が軸となるペ・ランのキネティック・スカルプチャー「LED n6」「LED n23」は、ゆっくりと動くフィルムと変化する光によって、繊細で絶えず変化し続ける美を体現し、鑑賞者を静謐な時間の流れへと誘います。

ベサ・サラサンが音楽家マルクス・ガンツおよびフラウンホーファー研究所とともに開発した「SPIRALPROJEKT 1983–2024」は、三次元のスパイラルと音楽をリアルタイムでアニメーション化することで、生成的マルチメディア表現を具現化する作品です。1980年代に構想され、現代のテクノロジーによって実現された本作は、アルゴリズムを用いて無限のバリエーションを生み出しながら、継続的な創造と絶え間ない変容という本展のテーマを象徴しています。

ツーエンターが手がける「Virtual Lineage Taiwan」と「DATA-VERSE U # Calendar」は、デジタル情報の流れを視覚化するものです。「Virtual Lineage Taiwan」では人工知能を用いて台湾のインターネット・インフラの歴史を再構築し、デジタルの記憶がいかに形成され、また喪失されていくかを探ります。一方、「DATA-VERSE U # Calendar」は、インターネット上のリアルタイムデータにより日々更新されることで、従来のカレンダーを「生きた人工物」へと変容させます。

作家自身の身体をスキャンし仮想モデルへと変換することで、デジタル化の過程において何が得られ、何が失われるのかを考察するチュアン・ペイシンの「The Method of Entry」は、存在と不在のあいだの曖昧な境界や、物理的エネルギーがデジタル上の潜在性へと転換されるときに生まれる新たな可能性を探ります。

本展は、電子的、デジタル的、身体的、概念的といった多様なエネルギーが、各作品においてどのように流動し、交錯しているのかを鑑賞者に問いかけます。また、参加作家たちはいずれも、運動や変容、そして継続的な創造のプロセスに取り組み、完成された作品だけでなく、それを形作る動的な力そのものへと、観る者の意識を向けさせます。

「Dynamo」は、テクノロジー、記憶、そして身体が絶えず変容し続けるこの時代において、美術がいかにその流動性を映し出すかを見つめ直すためのプラットフォームです。そして、本展は、アートをエネルギーとアイデアの循環に能動的に関与する存在として位置づけているのです。


会期:5月17日(土)– 6月14日(土)
開廊時間:12:00 - 18:00  ※日月祝休廊
オープニングレセプション:5月17日(土)17:00~19:00
※5月17日(土) アーチスト在廊予定

河合政之によるライブパフォーマンス
5月17日|土|16:00〜(約30分)
料金 : 1,000円 *事前予約が必要です。
メール([email protected])かSNSでご連絡ください。

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チュアン・ペイシン
台北を拠点に活動する台湾出身のアーティスト。中国・広州美術学院油絵学科卒業。現実と虚構のあいだにある「変容」や「拡張」の概念に焦点を当て、デジタル素材と身体における想像力や変形の可能性を探求している。デジタルメディアをまるで粘土のように変形させる表現で知られ、理性と感情を交差させるような視点を鑑賞者に提示する。映像、絵画、インスタレーション、彫刻といった複数のメディアを横断した実践を行っている。

Chuang Pei-Xin | The Method of Entry | 2023
Video, stone clay, steel rods, photo paper
©Chuang Pei-Xin. Courtesy the artist and Chi-Wen Gallery.

ツーエンター
Chuang En-Chi、Chen Cheng-Wei、Chiu Jie-Yi、Liu Ji-Jungの新進気鋭のメディアアーティスト4名からなるアートコレクティブ。視覚芸術、パフォーマンス、インスタレーション、音楽、プログラミングなど多様な専門性を背景に、それぞれの分野を融合させながら活動を展開。リアルタイムのネットワーク情報を可視化し、客観的データと主観的なアート表現を交差させることにより、デジタル空間に没入的な世界を構築している。

2ENTER | Virtual Lineage Taiwan | 2025
Single-channel 4K video, colour, sound, 7 min 29 sec
©2ENTER. Courtesy the artist and Chi-Wen Gallery

ベサ・サラサン
スイス出身のアーティスト。インフォーマル絵画、具象・抽象絵画、彫刻、教会のステンドグラス、トロンプルイユ(だまし絵)、政治的オブジェなど、多岐にわたる表現を手がけたことで知られる。1978年よりコンピューターを用いた制作を開始し、初期のデジタルアートの先駆者としても高く評価されている。多くの作品において、立方体(キューブ)を構造的な基盤としつつ、それを独自の視点で再構成することで、アニメーション化された三次元スパイラルの制作などに取り組んだ。

https://opensea.io/assets/ethereum/ 0x2aa3a8d7e0ee3cd91fd5792e0e9e47a0b84da385/112

Betha Sarasin | SPIRALPROJEKT 1983/2024
Web-based audio-visual real-time animation
Edition: 1/1/404 Minting open until 14 November 2024, 6 PM CET.
SPIRALPROJEKT #112
Courtesy Chi-Wen X MOV Collection

河合政之
映像、絵画、インスタレーションといった表現領域を横断する日本のアーティスト。リアルタイムのアナログ映像フィードバック・システムを用い、東洋哲学的な視座と現代メディアとの接点を探る実践を展開している。また、自然とテクノロジーのプロセスに内在する流動性や不確かさを見つめ、人為と偶発のあいだに生まれる関係性に焦点を当てた作品を制作。インスタレーションでは、伝統的な日本の工芸の枠組みや自然素材、模様などを取り入れることで、有機的な循環と電子的エネルギーとの連続性を可視化している。

Crystallization/ 2025 / 54x44x1cm / UV pigments on glass, wood


ペ・ラン
スイスを拠点に活動するアーティスト。光、色彩、機械的な動きの繊細な相互作用に着目し、キネティック・スカルプチャーおよびインスタレーションを制作している。幾何学的な精度とミニマリズムに基づく美学を特徴とし、緩やかに動く機構を通して、素材のもつ繊細な複雑性や、不完全さの中に宿る美を引き出している。彼の作品は、知覚における物質的側面と非物質的側面の双方を静かに照らし出し、観る者に深い省察を促す空間を生み出す。

LED | nº 6 , 2021-2022
Motor, LED, lens, color film, mechanical parts
42,5 x 36 x 9,5 cm
photo: Aleksandra Oilinki


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参加ギャラリー

STANDING PINE(名古屋/東京)
STANDING PINEは、名古屋および東京に拠点を構える現代アートギャラリー。国内外のアーティストによる革新的な表現を紹介し、とりわけ新しいメディアやインスタレーション、学際的な実践に注力している。展覧会の共同企画や、新進そして著名なアーティスト支援にも積極的に取り組み、日本の現代アートシーンにおける創造的な対話と展開の場を提供している。

Chi-Wen Gallery(台北)
台北を拠点に、映像、ニュー・メディア、デジタルアートに特化した先鋭的な企画を展開し、現代美術を牽引する存在として知られる。台湾を代表するアーティストから新進気鋭の作家まで幅広く取り上げ、実験的なプロジェクトや学際的なコラボレーションを積極的に支援。アジアと世界のアートシーンの架け橋となることを目指し、国際的な対話の場を創出している。
https://chiwengallery.com

MORI YU Gallery(京都)
京都を拠点とする、斬新かつ多様なプログラムを展開する現代アートギャラリー。日本および国際的な現代アートの対話を促進する先鋭的な展覧会を企画し、他機関やギャラリーとの連携にも積極的に取り組み、芸術的な交流と実験を推進する場を提供している。
http://www.moriyu-gallery.com/index.html?l=jp

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