EXHIBITION

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  • 杉山健司
  • Gaze into the Distance
  • 2024.03.02 Sat - 2024.03.30 Sat
    • 杉山健司アセット 1

STANDING PINE東京では、3月2日(土)から3月30日(土)まで、杉山健司の個展「Gaze into the Distance」を開催いたします。杉山は、1962年に愛知県に生まれ、1998年より「I.I.M. Institute of Intimate Museums」と題したシリーズを継続的に制作しています。視覚のトリックを利用して精緻に構築された想像上の美術館や図書館は、国内外の多くの鑑賞者を魅了し続けています。杉山の作品では、空間に鑑賞者が視点を変えながら入り込んでいくことによって、作家の内的世界へと導かれていきます。本展では、今まで続けてきた作家自身の為の美術館や、作家の頭の中の記憶の図書館などのシリーズの新たな展開として、展覧会名と同じ「Gaze into the Distance」 と題した新作を中心に展示いたします。

「Gaze into the Distance」は、少し時代がかった美しい劇場を題材として作り込まれています。目そのものや、覗くこと、個人的な記憶や体験、目の機能などによって同じ物を見ていてもズレが生じる事、これらが杉山の全作品における一貫したテーマであり、彼の世界を紐解く鍵でもあります。本作は、「瞬きをする人」というイメージで制作されています。古びた趣のある劇場には沢山のカーテンや緞帳がかかっています。それらは瞼の縁にあるまつげを連想させ、まるで作品全体が一つの大きな目であるかのように思わせます。観客は自分一人、遠くの舞台を見ています。舞台の一番奥には杉山の過去の作品が見えますが、望むなら鑑賞者の過去の映像を映し出すこともできます。今までの杉山の作品では焦点距離が近いものが多かったのに対し、本作では鑑賞者が遠くにある舞台上を見つめる構造になっています。

広い会場の中は、入れ子状態になって鑑賞者を劇場の中へと誘います。作品は、作家と鑑賞者の記憶や想像を結びつけ、鑑賞者は作品の一部に同化しているような感覚になります。人の一生は瞬きの間、束の間のことなのかもしれません。だからこそ、記憶が人を構成する重要な要素となるのです。本展はこれまで制作した作品も合わせ、会場全体が杉山の、そして鑑賞者の記憶の迷宮となっています。個々の作品写真だけでは切り取ることのできないローテクで精緻、膨大な時間をかけた古くて新しい空間を是非体験してください。

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