EXHIBITION
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Whither Blue (VII) / 100 × 100 cm / Acrylic on canvas / 1982
- 福島秀子展
- 2025.04.12 Sat - 2025.05.10 Sat
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福島秀子展
STANDING PINE 東京では、2025年4月12日(土)より、日本の戦後美術を代表する女性抽象画家のひとり、福島秀子(1927–1997)の個展を開催いたします。本展では、福島が長年にわたり探求した「円」や「青」といった造形的・色彩的テーマ、そして「スタンピング(型押し)」技法を用いた作品を中心に、14点を展示いたします。
1927年、東京に生まれた福島秀子は文化学院を卒業後、1951年、瀧口修造により命名された前衛芸術集団「実験工房」に、北代省三、山口勝弘らと共に創立メンバーとして参加。美術、音楽、映像、舞台芸術といった複数の領域を横断しながら、バレエ作品における衣装や舞台装置の制作を手がけ、グループメンバーである弟の福島和夫とオートスライドによる映像作品なども発表しました。
こうした活動と並行して、福島は、一貫して絵画における独自の抽象表現を追求していきました。制作初期には、阿部展也をはじめとする同時代の作家や当時の美術動向からの影響を受けつつ、人間の顔や身体、植物といった具象的モチーフを抽象化する作品を描き出しますが、その関心は次第に、より純化された抽象性へと向かっていきます。そして、1950年代半ばには、缶や瓶、時には犬の骨と思われるものの断面に絵具を塗り、それを紙やキャンバスに押し当てる「スタンピング(型押し)」という手法を確立。福島は、この「押す」という行為によって円形、矩形や線状の形象を生み出し、さらに絵具を幾重にも重ね、かすれを伴う躍動的な筆致を交差させることで、自身の抽象絵画を築き上げていったのです。中でも円形は、福島の構図に繰り返し用いられ続けました。
これらの作品は、1950年代にヨーロッパで隆盛した抽象絵画の潮流「アンフォルメル」とも共鳴し、フランスの批評家ミシェル・タピエをはじめとする国内外の専門家から高い評価を受けます。その注目を追い風に、彼女はヨーロッパ各地の展覧会に参加し、国際的な舞台での活躍の場を広げました。
その後、パラフィン・ワックスを用いたコラージュ作品など様々な表現を試みながら、福島は、1960年代に特徴的だった暗褐色の色彩、そして象徴的な形としての「円」から徐々に距離を置き、1970年代に入ると「青」への傾倒を深めていくことになります。作家が強い関心を寄せていたとされる「水」と深く結びついたこの色は、彼女の絵画に対する静謐で内省的な姿勢を映し出すようでもあり、鑑賞者に、時間の流れのなかに身を委ねるような感覚をもたらします。
近年、国内外で女性作家による抽象芸術の再評価が進む中、福島の作品にも改めて注目が集まっています。本展が、こうした動向と呼応しつつ、現代の視点から作家の作品世界に改めて向き合う機会となれば幸いです。
皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。
会期 : 4月12日(土) - 5月10日(土)
開廊時間 : 12:00 - 18:00 (火-土) ※日月祝休廊
オープニングレセプション : 4月12日(土) 17:00 – 19:00
72.5 ×53 cm / キャンバスに油彩、エナメル / 1958
Biography
略歴1927年、東京に生まれる。文化学院卒業後、1948年に北代省三、山口勝弘らとともに前 衛美術グループ「七耀会」を結成。1951年には瀧口修造が命名した「実験工房」に参加し、 舞台芸術や映像、美術などジャンルを越えた表現に取り組む。多様なメディアを横断しな がら、総合的な芸術実践に携わる一方で、独自の抽象絵画を追求。1950年代半ばには、 型押し(スタンピング)によって円や矩形、線を画面に浮かび上がらせる独自の技法を確立 し、自らの表現を深化させていった。その制作は1950年代から1990年代にかけて国内外で継続的に発表され、フランスの批 評家ミシェル・タピエの支持も受けながら、パリ青年ビエンナーレ(1961)への出品を契機に 渡仏するなど、国際的にも活動の場を広げた。モノクロームによる「弧」シリーズや、青を基 調とした作品、パラフィン・ワックスを用いたコラージュなど、時代ごとに異なる手法を取り入 れながら、一貫して静謐かつ探究的な姿勢を貫いた。これまでに、東京国立近代美術館、東京都現代美術館、千葉市美術館、高松市美術館、 板橋区立美術館、テート・モダンなどに作品が収蔵されている。主な展覧会に、「特集展示 福島秀子: クロニクル1964–」(東京都現代美術館、2012)、「Tokyo 1955–1970: A New Avant-Garde」(MoMA、ニューヨーク、2013)、「戦後芸術を切り拓く 実験工房」( 2013–2014年、国内巡回)などがある。
主な個展・グループ展
1927 東京都に生まれる
1943 文化学院卒業
1949 第3回女流画家展(東京都美術館)に出品(第4回、第7回にも出品)
1951 「実験工房」に参加 1955 個展(村松画廊)/第18回国際水彩ビエンナーレ(ブルックリン美術館/ニューヨーク)
1957 世界・現代芸術展(ブリヂストン美術館)
1958 「新しい絵画・世界―アンフォルメルと具体」(産経新聞社・大阪新聞社主催)
1959 個展(村松画廊)/第11回プレミオ・リソーネ展(第12回にも出品/イタリア)
1960 第2回みづゑ賞受賞「作品81」/ 第4回シェル美術賞展にて第2位受賞
1961 第6回日本国際美術展(東京都美術館・毎日新聞社主催)/パリ青年ビエンナーレに出品・渡欧
1963 個展(南画廊)
1965 現代日本美術展(スイス)
1975 個展(南天子画廊)
1976 個展(青画廊)
1979 個展(南天子画廊)
1980 シェル美術賞歴代受賞作家展(東京セントラル美術館)
1981 「現代美術の動向1-1950年代の暗黒と光芒展」(東京都美術館)
1982 「第1回現代芸術祭―瀧口修造と戦後美術」(富山県立近代美術館)/個展(南天子画廊)
1986 「前衛芸術の日本 1910-1970展」(ポンピドゥー・センター/パリ)/個展(南天子画廊)
1987 個展(画廊文化学院)/「美との対話 '87」(富山県立近代美術館)
1988 個展(画廊文化学院)/「日本尖端科技芸術展」(台湾省立美術館-現・国立台湾博物館)/「現代美術の動勢—絵画PART2」(富山県立近代美術館)
1989 「現代絵画の断面—くり返しの構造展」(高松市美術館)
1990 「東京アヴァンギャルドの森・1946–1956展」(板橋区立美術館)
1991 「第11回オマージュ瀧口修造―実験工房と瀧口修造展」(佐谷画廊)
1992 個展「第12回オマージュ瀧口修造―福島秀子展 1948–1988」(佐谷画廊)
1997 逝去
2009 「実験工房: 日本 1951–1958」(アネリー・ジュダ・ファイン・アート/ロンドン)
2011 「実験工房展」(ベトンサロン/パリ)
2012 特集展示「クロニクル1964– OFF MUSEUM」(東京都現代美術館)
2013 「実験工房:戦後芸術を切り拓く」展(神奈川県立近代美術館を皮切りに全国巡回) /「Tokyo 1955–1970: A New Avant-Garde」(ニューヨーク近代美術館/ニューヨーク)
2017 個展(東京パブリッシングハウス)
2023 「MOTコレクション ただいま/はじめまして」(東京都現代美術館)
2024 「交差するモダン:アジア美術の中の日本美術」(京都国立近代美術館)
主なパブッリクコレクション
東京都現代美術館
東京国立近代美術館
高松市美術館
大原美術館
板橋区立美術館
千葉市美術館
テート・モダン(ロンドン)
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