EXHIBITION

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  • 大泉和文 個展
  • Beyond Constructivism
  • 2020.11.07 Sat - 2020.11.28 Sat
    • 大泉和文アセット 1

STANDING PINEは11月7日(土) から28日(土)まで大泉和文の個展「Beyond Constructivism」を開催致します。

大泉は1991年以降、オートマティッ ク・ドローイング・マシンおよび大規模なインタラクティブ・インスタレーション作品を制作し、神戸ビエンナーレ(神戸) やアルス・エレクトロニカ(リンツ、オー ストリア)などで作品を発表しています。本展は《可動橋/BH 3.×》と《Schrödinger’s kitten(シュレーディンガーの仔猫)》の2作品からなります。これらの作品は、物理的な物体が動くリアリズムの体現と身体性をヴァーチャルではなくフィジカルに観賞者に訴えかけます。また大泉は、作品制作と共に、国内外で活躍した日本の初期コンピュータ・アート集団、CTG (Computer Technique Group) の研究を行ってきました。これまでCybernetic Serendipity展への出品などが断片的に語られてきたCTGの全活動を明らかにし、同時代の国際的なコンピュータ・アートに対照し、美術史における意義を論考しています。

大泉の作品にはコンピュータが使われる事が多い反面、自らメディア・アーティストを名乗ったことはありません。彼の作品は、「アート& テクノロジー」の観点でしか語られない狭義のメディア・アートに疑問を呈し、現代美術の一領域としての位置づけを目指しつつ、メディア・アートの起源であるコンピュータ・アートの多様性を再提起しています。

《可動橋/BH 3.×》 壁(の破壊)から可動橋へ
この作品は文字通り可動橋のインスタレーション作品であり、時折、分断された通路を繋ぎます。2つの橋はそれぞれの周期で上昇と下降を繰り返しますが、通常、持ち上がっている橋が降りるタイミングは、観客の存在や意思とは無関係です。幸運な観客は、実際に橋を渡って向こう側に渡ることができます。ただし、若干の勇気が必要です。なぜなら、設計に際しては基本的な構造計算を経ていますが、橋桁は透明のために床が見え、細いアルミニウムの構造もあまりに華奢に感じられるからです。

大泉は作品の背景と意図を次のように記します。

物心ついた時,世界は東西二陣営に分かれていがみ合っていた.ベルリンの壁はその象徴的な存在であり,近世の城郭都市が20世紀半ばに突如現れたような歪な存在だった.壁の一面は鮮やかで自由なペインティングに覆われ,もう片方は打ち放しのコンクリートのまま一切の表現を封じ込めていた.一方でこの東西冷戦構造と壁の存在は,理想とはほど遠いながらも,未来に続くものと信じて疑わなかった。それが1989年をもって崩壊した時,楽観的な言説が世界を覆ったし,幾つかの枠組みは確実にシフトした.翻って現在,世界各地に何度目かの壁が建設される時代になった.物理的な壁も確固として存在するし,思想傾向,観念形態としての壁もある.この傾向は暫く続きそうであるし,その数も規模も大きくなる方向に進みつつある.

大泉は、芸術の役割は壁ではなく橋を作ることであると考えます。此方と向こう側に橋を架けることは、当然新たな困難も呼び込むが、人類の歴史はその衝突と克服の連続であり、なんら問題のないユートピアは永久機関同様存在しません。まずは概念としての橋を作ることから始める。それは壁の堅牢さを競い合うよりも、少しは理想や問題解決に繋がるでしょう。

《Schrödinger’s kitten(シュレーディンガーの仔猫)》
作品タイトル《Schrödinger’s kitten(シュレーディンガーの仔猫)》は、量子力学の有名なパラドックスに由来します。本作品は、会期中ドローイングを続けるインスタレーション作品です。シリーズ3作目となる本作は敢えて小型化し,S6号(41cm×41cm)のキャンバスが、レール上をダイナミックに動きながら描画します。観客不在の定常時、マシンはキャンバスに水平線を描く往復運動を続けます。観客が作品の前にやってくると、マシンは線分の位相とベクトルを暫く変更し続けます。コンピュータが膨大な組み合わせの中から選択した各パラメータ (キャンバスの移動方向、距離、加速度など)の集積が、線分(曲線)を決定します。観客が去った後、パネルは定常時の状態へと回帰します。

その主眼はマシン自体でもできあがったドローイングでもなく、この作品が設置される空間と時間と観客の関係と固有性にあります。観客はマシンの描画状況を通して、「描画という行為」における規律とダイナミズムを観賞します。さらに感覚に占める視覚優位性や、実体験から仮想体験の潮流に対し、本作品はマテリアルが目前で動くリアリズムの体現と身体性を再提起しています。個々の線分や曲線は、完成後のドローイング画面からすれば、極めて微視的な存在に過ぎません。一定期間の描画を経て完成したドローイングは、集合知としての抽象美を創出するのか、それとも合成の誤謬でしかないのか。来場者は自分の存在をトリガーとして目の前で行われる描画を観つつ、考えることになります。

「合成の誤謬(fallacy of composition)」とは、元々経済学用語ですが、個々人としては合理的な行動でも、多数の人の行動の総和を取ると好ましくない結果が生じることを意味します。身近なところではネット上の炎上事件、さらにメディアで繰り返し取り上げられるポピュリズムと民主主義の制度疲労、グローバリズムと経済格差の拡大など、枚挙にいとまがありません。それらの根底にある個々人の理想と正義(倫理)は基本的に正しいにもかかわらず。量子論のパラドクス「シュレーディンガーの猫」の命題は、ミクロ的な対象を二つの状態の重ねあわせと理解できても、マクロ的な対象をそう考えられるか、例えば生と死を併せ持った状態として「猫」の存在を認められるかにあります。大泉は「合成の誤謬」と「シュレーディンガーの猫」の2つが、相称(対称)関係にあると捉えます。このマトリクスを通じて、世界と歴史を俯瞰する視座を提示しています。

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1964年 宮城県生まれ.
1987年 筑波大学 芸術専門学群 卒業.
1993年 筑波大学大学院修士課程 芸術研究科 総合造形 修了.

主な個展
2018年 《可動橋/BH 1.0》N-mark5G,名古屋市
2004年 《シュレーディンガーの猫 / 皇帝列車》ギャラリーC・スクエア(第64回企画),名古屋市
2001年 《platform project 2001》KSPギャラリー(かながわサイエンス・パーク),川崎市
1991年 《media+architecture》第1回「コニカプラザ・アーティストプライズ」受賞展,
     コニカプラザ,東京

主なグループ展
2018年 《視覚装置Ⅰ──視差について》《視覚装置Ⅱ──視軸について》
    「人間表現とメディアアート展:拡張する知覚」,
     愛知県立芸術大学芸術資料館(University Art Museum, Aichi University of the Arts)
2017年 《Loss of Horizontality》
    「映像とメディアアート展:インターフェイスとしての映像と身体」,
     愛知県立芸術大学芸術資料館(University Art Museum, Aichi University of the Arts)
2007年 《シュレーディンガーの猫 II 》アートインコンテナ展,神戸ビエンナーレ2007,神戸市
2003年 《シュレーディンガーの(子)猫》「Media Art A to Z」展,
     国際デザインセンター・デザインギャラリー,名古屋市
2002年 《幻の美術館視覚化プロジェクト1, 2, 3》「美術館の夢」展(兵庫県立美術館)
     高橋由一《螺旋展画閣》,中原實《Museé de Noir》,松方幸次郎《共楽美術館》以上3つの
     美術館構想を対象に,最新の学術研究成果を踏まえて三次元CGにより
     内・外観の再現を試みた。(中京大学 曽我部研究室との共同)
2001年 《platform project 2001-2》「モノの芸術・メディアのアート──表現者たちの冒険」展,
     常葉美術館,静岡県
1998年 《 I. レオニドフ『レーニン研究所・図書館』『重工業省庁舎』案ほかのVR》
    「デジタルアート・スプラッシュ!」展,福島県立美術館
1996年 《 I. レオニドフ『重工業省庁舎』案CG》ほか「未来都市の考古学」展
    (東京都現代美術館,広島現代美術館,岐阜県立美術館巡回)
1993年 《断片曲線》つくば美術館,愛知県立芸術大学芸術資料館)

受賞
1991年 第1回「コニカプラザ・アーティストプライズ」受賞