ARTISTS

  • Youki Hirakawa
  • 平川祐樹

平川は1983年名古屋市生まれ。

大学院修了後にドイツに渡り、2016年に帰国、現在は愛知県を拠点に活動しています。

事物の構造や歴史を紐解き、それらの関係性を巧みにずらしながら、映像、インスタレーション、立体とメディアを自由に横断した作品を制作を行なっています。ロッテルダム国際映画祭(オランダ)やオーバーハウゼン国際短編映画祭(ドイツ)といった国際映画祭での招待上映のほか、シンガポール国立公文書館、ソールズベリー大聖堂、ダラム大聖堂(イギリス)、ティコティン美術館(イスラエル)、シェフィールド美術館 (イギリス)でのグループ展への参加や、台北デジタルアートフェスティバル(台湾)、札幌国際芸術祭、あいちトリエンナーレ、国際芸術祭カウナスインアート(リトアニア)など、国内外で作品を発表しています。

2019年から続いた長いコロナ禍期間中に体験した神秘的な出来事により、それ以前のモノクロームな映像作品とは印象の異なる、色彩豊かな既製品を使った作品を多数生み出しています。缶ビールを樹脂製の水滴で覆ったForever Freshシリーズでは、瞬間を永遠にするという美術の普遍的なテーマを扱いながらも、長いコロナ禍のまるで静止してしまったかのような時間、それでも確かに老いていく身体という現実をユーモアを交えて提示しています。広告写真で商品の鮮度を表すために使われるシズル(水滴)からインスピレーションを受けたという樹脂製の水滴は、その後、他の作品にも頻繁に現れるようになります。ステンレス製の洗濯物干しをびっしりと覆った水滴は、まるで外界との温度差で結露しているかのような印象を受けます。洗濯物干しという乾燥器具が濡れているという矛盾した状態は、ヨーロッパとアジアを行き来する中で作家自身が感じてきた、文化の土台となる自然の乾湿差が濃厚に反映されています。
また、検閲により黒く塗り潰された輸入ポルノ雑誌を銀色に塗装したSensorでは、思春期に否応無しに形成されてしまった西洋文化に対する劣等感と憧れを、反射素材であり感光物質でもある銀を用いて表現しています。購入者の努力によってうっすらと削り落とされた黒塗りは、見ることへの欲望、そのものの形と言えます。ミニマルな様相を装いながらも、未だ西洋中心的と言わざるを得ない現代アートの世界で活動するアジア人作家が捉えた、自身のアイデンティティに関わる問題が批評的に扱われています。

「美術は、時間へと反抗する力」と作家が語るように、様々な作品群を結びつけるのは、事物が持つ構造そのものへの鋭い着眼点と、作家が一貫して持つ時間という得体の知れないものへの好奇心です。パンデミックを経た社会では、他者と同じ空間や時間を共有するという意義が大きく変化しました。アーティストにとっても困難な時代、閉ざされた空間と重く苦しい時間、そして断絶された制作の流れは奇しくも新しいインスピレーションの源泉となり、新たな創造を生み出しました。未曾有の変化により再定義された時間や空間の概念、そして事物の構造や関係性を、少しのユーモアを備えながら我々に問いかけます。

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  • biography
  • 略歴

1983年名古屋市生まれ。愛知県を拠点に活動。

15-16 文化庁新進芸術家海外研修員
14-15 クンストラーハウス・ベタニエン滞在作家
13-14 ポーラ美術振興財団在外研修員
11-12 アカデミー・シュロスソリチュード滞在作家
08 名古屋学芸大学大学院メディア造形研究科 修士課程修了

近年の主な個展
2022「D.F.N」スタンディング・パイン、名古屋、愛知
        「Untitled Tear」アンドーギャラリー、東京
2021「a film by」アンドーギャラリー、東京
2019「Years Later」スタンディング・パイン、名古屋、愛知
        「Rêve d’artiste La Magie à travers les âges」アンドーギャラリー、東京
2018「映画の見る夢」ポーラ美術館、神奈川
        「A River Under Water」 アニマ=ムンディ、セント・アイヴス、イギリス
        「Due cuori Sperduti nel buio Due occhi per non vedere」カルメ・ブレシア、ブレシア、イタリア
2017「The Better Way Back to the Soil」ダブル・スクエア・ギャラリー、台北、台湾
2016「Secret Fire」アニマ=ムンディ、セント・アイヴス、イギリス
2015「Into a Horizon」ホワイト・レインボウ、ロンドン、イギリス
        「Close Your Eyes」クンストラーハウス・ベタニエン、ベルリン、ドイツ
        「Same Places, Different Phases―Energy, Matter, and Time」
          クンストクラフトヴェルク、ライプツィヒ、ドイツ
        「Unseen / Unscene」クンストフェライン・ヴォルフェンビュッテル、ヴォルフェンビュッテル、ドイツ
2014「In Remembrance of Disappearance」MOT / ARTS、台北、台湾
2013「眠りにつくまで」美濃加茂市民ミュージアム、岐阜

近年の主なグループ展
2023「Stoneverse」花蓮県石彫博物館、花蓮、台湾
       「Earth, Water, Wind, Fire...and Emptiness」ティコティン美術館、ハイファ、イスラエル
       「Next Art Tainan」台南、台湾
2022「From Sky to Sea」シェフィールド美術館、シェフィールド、イギリス
2021「LUMIERE」ダラム大聖堂、ダラム、イギリス
        「ストリーミング・ヘリテージ2021」 名古屋、愛知
2020「State of Motion 2020: Rushes of Time」シンガポール国立公文書館、シンガポール
        「Spirit and Endeavours」ソールズベリー大聖堂、ソールズベリー、イギリス
2019「第65回オーバーハウゼン国際短編映画祭」オーバーハウゼン、ドイツ
        「ロッテルダム国際映画祭2019」ロッテルダム、オランダ
2017「台北デジタル・アート・フェスティバル」台北、台湾
2016「非空間」 アクバンク・アート、イスタンブール、トルコ
        「19th DOMANI・明日展」国立新美術館、東京
        「KAUNAS MENE:カウナス現代芸術祭」カウナス、リトアニア
        「オープン・シアター 」 神奈川芸術劇場、神奈川
2014「札幌国際芸術祭2014」札幌、北海道
2013「あいちトリエンナーレ2013」名古屋・岡崎、愛知
        「異邦人」国立台湾美術館、台中、台湾
2012「光 陰―ひかり、かげ、とき―」岡崎市美術博物館、愛知
        「国際ヴィデオアートフェスティバル Now&After’12」モスクワ市近代美術館、モスクワ、ロシア

artist website
http://www.youkihirakawa.jp/

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